9話 : 朝起きたら・・・

俺は重たい書類ケースをもって急いでいた。

偶然とった客からの電話が俺に突然の幸運をもたらしてくれたのだ。

実際に会ってみると何となく色気のある中年女性だった。


これはいける!



そう直感した。
俺は年上の女性ならまず嫌われることはない。
むしろ、必要以上に好かれてしまうことが多いのだ。



今回も、この顧客はまんまと俺のイケメンフェイスを気に入ってくれたようだった。

一度商談をして以来この女性からの契約件数は後を絶たず、毎日のように俺宛の発注書が届いていた。


このままだと昇給・昇進は当たり前、もしかしたら上司を飛び越えてしまうかもしれない…
俺は興奮していた。


今は上司のもとへ今週の売り上げ報告書と契約書を提出するために先を急いでいるのだ。
長く暗い廊下を急いで上司の元に到着すると、ありえないほどにこやかな上司がそこにいた。


「今週の分です!」


俺は勢いよく書類を上司の卓上に置く。


「頑張ったみたいだな。どれ…」


俺の目の前で上司が契約書に目を通し始めた。


いつもなら『よろしくお願いします』と言い置いてその場を去るのだが、
今回はほめ言葉が出るに違いないと、上司の前でその反応をうかがっていた。



すると、上司の顔がみるみる不機嫌になっていくではないか。

俺は恐ろしくなった。

眉間にしわが寄ったと思ったら頭の先から真っ赤になり、汗を吹き出している。

書類を見つめる目は鬼のようだ… いや、鬼だ!



いつの間にか上司の禿げ頭には皮膚が隆起して鬼の角が生えていた。

「おい、お前・・・」


鬼が言う。



「契約書のすべてに捺印が抜けているではないか、これもこれもこれもこれもこれも・・・」

「そ、そんなはずは…!!」
「これも抜けてる!これも抜けてるぞおおおおお!!!」


ついに鬼は書類を放り投げて俺の方に向かってきた。
俺は恐怖でその場にへたりこむ…


(ああ、どうして、、どうしてこんなことに・・・・)






「うぐぐ、どうして…抜けてる…抜・・・・・・・はっ!!? 」



自分が発する唸り声で我に返る。
真っ暗闇だったが、どうやらここが自分の部屋であることは確かなようだ。

悪夢を見ていたらしい。


寝るときクーラーのタイマーを短く設定してしまったようで、冷房が切れてずいぶん時間が経っていた。



「なんだよもう・・・最悪だ・・・」



すでに夢の内容はほとんど思い出せない。
ただ、上司がすごく怒っていたような気がする…


時計を見ると時間は5時を過ぎたところだった。

今からすぐ寝てもそれほどゆっくりはできないだろう。


「もういいや、今日は豪華な朝飯でもくってやるか。」


悪夢を見てしまったのはついていなかったが
このまま早起きしてゆっくり朝の支度でもしようという気になった。
俺は自分のポジティブなところが特に好きだ。


汗だくの体をシャワーが流してくれる。





「たまには早起きもいいもんだなあ~ ふんふんふーーん 」


寝起きの悪さもどこへやら、俺は鼻歌交じりにシャワーを終え、ベットの方に再び帰ってきた。
俺の部屋は典型的なワンルームだから、寝室が住居のすべてなのだ。
必要なものはすべてベットの周辺にある。



(スマホは…と、あ、あったあった。)


昨夜は友達とメールしている途中で寝てしまったのだ。
枕の後ろに挟まっていた。


ふと枕に目をやる。





「・・・ ? 」



うち、なんか動物飼ってたっけ?



俺の枕には、そう思わずにはいられないほど
おびただしい量の毛が落ちていた。



それが自分の「抜け毛」であることを認めるまでしばらく時間がかかった。


「まじかよ…」


慌てて鏡を確認する。


いつもの自分がそこにいた。


(なんだ、こんなに抜けても結構平気なもんなんだな。)


そういえばここ数週間、枕カバーを変えてない気がする。
掃除はこまめにしているつもりだったが、いつの間にか抜け毛がたまっていたんだろう。




・・・ということにした。




(この抜け毛は断じて昨日今日のものだけでは無いはずだ。断じて。)



ハンディ掃除機でさっと吸い取る。
あっと言う間に掃除は終わった。

時計を見ると5時半を過ぎたところだ。

枕カバーをとり、俺は洗濯機を回した。



洗濯機の前で俺はあいまいな夢の記憶を思い出そうとしていた。


抜けてる…って言いながら起きたような気がしていたのだ。


(百地さんが出てきた気がするよなあ…抜けてるって、、毛か? いやいやいやいや・・・)



俺は慌てて思考を消去し、台所に立った。

今日は豪華なごはんにするんだもんね。

冷蔵庫を開けた。


そこには数本の栄養ドリンクと、いつ買ったかわからないウィンナーの袋が1つ、ポツンと入っているだけだった。



<つづく>


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