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3話 : そういえばあいつどうしてる?
「おーい、こっちこっち!」

遠くから名前を呼ばれて振り返ると俺と同年代の男が手を振っていた。
「…も、もしかして山下か?!お前太ったなー!全然気づかなかったwww」
まだ4月だというのに日に焼けて、がっしりした体系の男だ。
俺はかすかに面影の残る中学時代の同級生に笑いかけた。
今日は同窓会だった。
この年になって、昔の仲間や懐かしい友人と再会する機会が多くなった気がする。
今日もフェイスブックを伝って俺のところまで同窓会の招待状が届いた。
大規模なものではなく、地元を離れて都会で頑張っている仲間だけの集まりだ。

山下 「お前はずいぶん男っぽくなったなぁ~!」
「そ、そうかな…?」
山下 「あの頃はほんとオンナみたいだったのにな!ラグビー部の先輩に目つけられてたよな。色んな意味で。」
「おい、会って3秒で黒歴史発掘すんなよ。」
山下とは在学中それほど仲良しだったわけではない。
しかし、長いブランクを経てお互い逞しくなった姿を見ると
自然に戦友のような不思議な連帯感を感じた。
地元を離れた連中はそれなりの苦労をして今に至っているはずなのだ。
残念なことに今回女性の参加者はおらず
総勢8人の小さな同窓会は繁華街の小さな立ち飲み屋で行われた。
店内が狭いため、テーブルは自然と4人ずつに分かれてしまう。
俺がついたテーブルでは 今回参加していない昔の仲間が今どうしているか という話でもちきりだった。
「かすみちゃん結婚したんだってよ。」
「まじでか~!俺高校まで一緒だったんだよな~」
かすみちゃんとは、クラスのアイドル的存在だった美少女だ。
「かすみちゃんが結婚か…そうか…俺たち、もうそんな年なんだな。」
「ほんと、25~26なんてすっごい大人だと思ってたけどな~」
「俺全然子供だわー、結婚とか信じらんねぇわ。」
「お前はまだ童貞だもんな。」
「そうそうまだ一度も…って、んなわけねぇだろ!」
学生の時と変わらない下らない会話に癒される。
みんなあの頃に戻ったみたいだ。
(これを機にもっと連絡とっておこうかな…)
「そういえばマーちゃんは来てないんだな。」
「マーちゃん…て正樹のことか?」
「そうそう、俺部活一緒で結構仲良かったんだよね。あいつ地元離れてこっち来てなかったっけ?」
山下 「あいつちょっと前に結婚したぜ。俺その頃偶然あってさ、確かミクシィでつながったと思う。」
山下が携帯を操作して画面を見せてくれた。

テーブルに一瞬沈黙が訪れた。
「・・・わ、」
「あっれーーーーーー?!」
「ちょい待て、コレ、もしかして・・・」
「正樹、ず、ずいぶん老けたな…」
それだけ言うのがやっとだった。
山下がにやりと笑う。
「・・・だろ?俺も地元で会った時全然気づかなかったんだ。でも正樹から話しかけてくれたからさ、いやーびっくりだよなぁ。
こんなに早く禿げるなんて。」
画面の中の正樹は結婚式の写真をミクシィに更新していた。
奥さんの隣でぎこちない表情をしているのはまさに正樹だったのだが、その額はずいぶん拡大している。
その雰囲気はまるで…
(百地さんじゃねーかこの頭…)
俺はゾッとした。
こんな年齢で禿げるなんてことがあっていいのだろうか。
ハゲるなんてことはまだまだ先の話だとおもっていた。
いや、少なくとも自分の周囲には存在しないものだと。
正樹は俺の知らないところで悩み続けていたに違いない。
(俺がもし今禿げたら…?)
考えるだけでも恐ろしいことだった。
まず、これまで親しかった女の子たちはみんな去って行くに違いない。
ミユキちゃんだって、きっと会ってくれなくなる。
大好きなお洒落も、美容室に行くことも、一気に楽しみが半減してしまうだろう。
「お前ら禿げたらちゃんと自己申告しろよ」
「お前もな!」
ハゲをネタにはしゃぐ同級生の隣で、俺は正樹を笑う気になれなかった。
そんな正樹の写真が「結婚式」のもので良かったと心から安堵した。
<続く>

遠くから名前を呼ばれて振り返ると俺と同年代の男が手を振っていた。

まだ4月だというのに日に焼けて、がっしりした体系の男だ。
俺はかすかに面影の残る中学時代の同級生に笑いかけた。
今日は同窓会だった。
この年になって、昔の仲間や懐かしい友人と再会する機会が多くなった気がする。
今日もフェイスブックを伝って俺のところまで同窓会の招待状が届いた。
大規模なものではなく、地元を離れて都会で頑張っている仲間だけの集まりだ。

山下 「お前はずいぶん男っぽくなったなぁ~!」

山下 「あの頃はほんとオンナみたいだったのにな!ラグビー部の先輩に目つけられてたよな。色んな意味で。」

山下とは在学中それほど仲良しだったわけではない。
しかし、長いブランクを経てお互い逞しくなった姿を見ると
自然に戦友のような不思議な連帯感を感じた。
地元を離れた連中はそれなりの苦労をして今に至っているはずなのだ。
残念なことに今回女性の参加者はおらず
総勢8人の小さな同窓会は繁華街の小さな立ち飲み屋で行われた。
店内が狭いため、テーブルは自然と4人ずつに分かれてしまう。
俺がついたテーブルでは 今回参加していない昔の仲間が今どうしているか という話でもちきりだった。
「かすみちゃん結婚したんだってよ。」
「まじでか~!俺高校まで一緒だったんだよな~」
かすみちゃんとは、クラスのアイドル的存在だった美少女だ。

「ほんと、25~26なんてすっごい大人だと思ってたけどな~」
「俺全然子供だわー、結婚とか信じらんねぇわ。」
「お前はまだ童貞だもんな。」
「そうそうまだ一度も…って、んなわけねぇだろ!」
学生の時と変わらない下らない会話に癒される。
みんなあの頃に戻ったみたいだ。
(これを機にもっと連絡とっておこうかな…)

「マーちゃん…て正樹のことか?」

山下 「あいつちょっと前に結婚したぜ。俺その頃偶然あってさ、確かミクシィでつながったと思う。」
山下が携帯を操作して画面を見せてくれた。

テーブルに一瞬沈黙が訪れた。

「あっれーーーーーー?!」
「ちょい待て、コレ、もしかして・・・」

それだけ言うのがやっとだった。
山下がにやりと笑う。
「・・・だろ?俺も地元で会った時全然気づかなかったんだ。でも正樹から話しかけてくれたからさ、いやーびっくりだよなぁ。
こんなに早く禿げるなんて。」
画面の中の正樹は結婚式の写真をミクシィに更新していた。
奥さんの隣でぎこちない表情をしているのはまさに正樹だったのだが、その額はずいぶん拡大している。
その雰囲気はまるで…
(百地さんじゃねーかこの頭…)
俺はゾッとした。
こんな年齢で禿げるなんてことがあっていいのだろうか。
ハゲるなんてことはまだまだ先の話だとおもっていた。
いや、少なくとも自分の周囲には存在しないものだと。
正樹は俺の知らないところで悩み続けていたに違いない。
(俺がもし今禿げたら…?)
考えるだけでも恐ろしいことだった。
まず、これまで親しかった女の子たちはみんな去って行くに違いない。
ミユキちゃんだって、きっと会ってくれなくなる。
大好きなお洒落も、美容室に行くことも、一気に楽しみが半減してしまうだろう。
「お前ら禿げたらちゃんと自己申告しろよ」
「お前もな!」
ハゲをネタにはしゃぐ同級生の隣で、俺は正樹を笑う気になれなかった。
そんな正樹の写真が「結婚式」のもので良かったと心から安堵した。
<続く>
2013年08月17日
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