19話 : 自信

俺「よし。っと、」



山のような書類をまとめて机の端におく。



これで今週の仕事は完璧だ。




俺「今日、土曜だけどな・・・はぁー。」



俺は自分のデスクの前で大きく伸びをした。



今日は休日出勤なのだ。
毎日膨大な仕事をこなしても、間に合わずにどうしても休日を使わざるを得ない。
土曜出勤はスーツでなくてもいいので、ジーパンにニットとかなりカジュアルな服装をしている。




周りには何人かの営業達が必死の形相でPCに向かっている。

みんな突然増えた仕事量に四苦八苦しているのだ。



百地さんの一件から、これまで大きく偏っていた営業業務をいくつかチーム分けして
割り振ることに決まった。



これにより百地さんの仕事量は随分負担が軽くなったはずだ。
逆にこれまで仕事の少なかった俺のような人間は仕事量がいっきに増大した。



しかし、チーム分けしたことで責任が分担され、かつ一人一人が効率よく営業成績を収めることができる環境になったのだ。


こうした業務システムの提案は俺と何人かの仲間で百地さんに提案した。

他の営業からは「チームに足を引っ張られる可能性もある」と指摘の声もあがったが、
ほとんどの営業が賛成し、百地さんも快諾してくれた。

改変からしばらく続くであろう残業や休日出勤の手当に関しては、百地さんが会社に掛け合ってちゃんと保障される形となった。



今はまだ引き継ぎ段階で、小さなトラブルも出ているが、みんながそれぞれ前向きに頑張っていると感じている。



百地さんの負担は減ったし、

個人のノルマで悩む必要もなくなった。(俺は元からあんまり気にしてなかったけど…)

それに残業や休日出勤の給料も明確に請求できるような仕組みを作ってもらえた。



正直、最初に百地さんに提案した時はここまできちんとしたシステムの形ではなかったのだが、
荒削りな提案でも、他人の目に触れることでいい方向に向かってくれたようだ。



俺「お先に失礼しまーす!」




俺は席を立った。

仕事は何とかうまくやっていけそうだ。



会社を出ると俺はキャップをかぶった。


俺の薄毛はそろそろ前髪では何ともならないほど進行していた。


ひとたび風がふけば、前髪が持ち上がり生え際の「M」字が目立つのだ。


おれもすっかりM字ハゲに仲間入りしていた。



街を歩くと、同じ薄毛の連中が目に入る。




仲間たちはみんなどす黒い顔色と死んだような目をして、猫背気味に歩いている。

今日は土曜だというのにまるでゾンビのような風体だ。



キャップをとってしまえば、俺もあんな風にみえるのだろうか・・・


薄毛になるにつれ、自分の見た目にはどんどん興味を持てなくなっていた。

最低限のお洒落はしているつもりだが、以前のようにトレンドを追いかけたり、長時間鏡の前にいることはできなくなっていた。


ふとショーウィンドウに自分が写るだけで、今は苦痛に感じるのだ。





今からの予定は何もない。

軽く飲み屋で昼食を済ませ、家に帰って掃除でもしようかと思っていた。




その時、ふと肩を叩かれた。





達也「久しぶりー!何してんの?!」

俺「おっ、達也!」




振り返ると達也が俺を見下ろしていた。
相変わらず笑顔がまぶしい。



(そういや俺、こいつにライバル心燃やしてたこともあったな…)


今や全く勝てる気がしない。



達也「今暇なのー?俺お昼休みなんだけど。」

俺「俺仕事終わりなんだー昼行くか!」




達也とは例のパーティー以来会っていなかったが、そんな時差を感じさせない親しみを感じた。
これもまた達也の魅力の1つなのかもしれない。


二人で適当な店に入ると、男ふたりのお喋りが始まった。


俺は久しぶりに友達に会うことができたので、なんだか無償に話したい気分だった。

聞き上手な達也はよく聞いてくれた。


薄毛のこと、
彼女にふられたこと、
仕事でのこと、



決して暗いテンションにならないよう、笑いながら語った。



俺「いやーなんか最近いろいろあったわー、ほんと。」

達也「そうだったんだー大変だったんだね。」

俺「ほんとだよ、おかげですっかり老け込んじゃって、、、」



ここで俺はさっとキャップをとる。

達也の前で陰湿なハゲになりたくなかったのだ。





達也「おーきてるね。」

俺「そうなんですよ、そりゃふられるよねって感じでしょ。」

達也「んー。」

俺「俺もう恋なんてできないのかなあ~」


俺は大げさに嘆いてみせる。本音だった。




達也「それはないって。なんなら俺がかっこよくしてあげるよ?」


俺「・・・は?・・どういうこと?」




達也はニッと笑って腰に下げた小さなバッグから何かを取り出した。



いかにもよく切れそうな… はさみ だ。



俺は達也の身のこなしや、話し上手な性質が職業からくるものと理解した。




達也「うちの店、すぐそこだから。」



そういうと達也は完璧なウィンクをしてみせた。


<続く>

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