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17話 :別れ
(休日の昼だというのに、こんなイケメンが家で寝ていていいのだろうか…)
そう思いつつも、天井を見上げながら一向に布団の外へ出ようという気は起らなかった。

最近抜け毛が前より目立ってきた気がする。
朝起きたら枕元を粘着テープでコロコロやるのが日課になっていた。
今日はそれをする気も起らないのだ。
最近どうもついていないおかげで、隙さえあればボーっとしてしまう。
何を考えるでもなく、ただじっとしているのだ。
メールや電話も、以前はマメに返事をしていたが、今ではよほど重要な内容でない限り
自分だけで納得してお終いにしてしまうことが多くなっていた。
「俺も年取ったってことかなあ~」
ため息交じりに寝返りを打った。
(みゆきちゃん、どうしてるんだろうな…)
考えないようにしていたが、つい考えてしまう。
ケンカして、早くも2週間が経とうとしていた。
それなのにあちらからの連絡は一切ない。
こちらからは、返信が必要ない程度の軽いメールを数回送っている。
だが、どれにも返信は無かった。
これまでも1か月近く会えないことはあった。
お互い社会人なのだから、少々連絡が途絶えても仕方がないはずなのだ。
ブーン…
枕の下でスマホのバイブ音がした。
見ると、美幸ちゃんからのメールだった。
『しばらく連絡できなくてごめんなさい。
今日、もし暇だったら会えない?
できれば外で会いたいな。』
落ち込んでいた気分が一気に晴れるのがわかった。
「あったりまえじゃーーーん!」
俺はピョーンと飛び起きて早速返信した。
こんなに早くメールを返すのはいつぶりだろう?
夕方5時に待ち合わせが決まった。
気に入っている服をいくつか出し、さっそく鏡の前で合わせる。
すると薄毛の気になる額が目に入る。
(今日は髪の毛のセットも念入りにしなくては…!)
約束の時間まで瞬く間に時が過ぎていった。
待ち合わせ場所には美幸ちゃんが先に来ていた。
美幸「久しぶりだね、ごめんね急に呼び出しちゃって。」
俺「いいんだよ!そんなの。俺も会いたいと思ってたから。」
美幸「・・・・うん。」
ディナーの時間には早いため、カフェを併設したバーに入る。
小さなテーブルにはちょうど二人分の背の高いイスがついている。
はたから見れば、お洒落で落ち着いたお似合いのカップルに見えるに違いない。
しかし、店につく過程も、今も、会話はほとんどない。
まず、視線がまったく合わないのだ。
嫌な予感がした。
ウェイターが注文を取りに来たので、俺はハイネケンを頼んだ。
美幸「あ、私はウーロン茶で。」
ウェイター「かしこまりました。」
俺「・・・」
ウェイターが去った後、俺は美幸ちゃんの横顔を見つめた。
美幸ちゃんはテーブルに乗せた自分の手を見ている。
もはや他愛もない会話をする隙さえ無かった。

美幸「あのさ、」
俺「・・・うん、」
美幸「もうわかってると思うけど。」
俺「・・・うん。」
美幸「私…」
美幸ちゃんが意を決したように俺の目を見た。
俺はその目をそらす。
美幸「あなたと別れようと思います。」

俺「・・・」
美幸「実は少し前から気になる人がいたの。」
俺「・・・」
美幸「今はまだ私の片思いなんだけどね、もう気持ちが傾いてしまったみたい。」
俺「・・・」
そのあとの美幸ちゃんの言葉はあまり思い出せない。
今度は俺が自分の指先を見つめ続ける番だったからだ。
俺の態度が冷たいとか、
連絡が少なくなったとか、
自分を見てくれていないとか、
よくある恋人への不満が聞こえたような気がする。
美幸ちゃんはひとしきり語り、ウーロン茶を一口飲んで、
テーブルに1000円を置いて去って行った。
去り際に、「 なんで何も言ってくれないの? 」 と言っていた。
( い っ た い 何 を 言 え ば い い ん だ よ )
手元のハイネケンがなくなりかけたころ、ウェイターが満面の笑みで問いかけてきた。
ウェイター「ご注文はいかがですか?」
しかし、ウェイターの目が俺に言う。
『お前、今あの女にふられただろう?』
俺「・・・いや、結構です…お勘定で。」
自分の妄想を必死で抑え込んで店を後にした。
店の前でタクシーに乗り、脇目もふらず帰宅する。
タクシー代を払うと財布はほとんど空になった。
俺は月曜の朝までベッドに横たわることにした。
<続く>
そう思いつつも、天井を見上げながら一向に布団の外へ出ようという気は起らなかった。

最近抜け毛が前より目立ってきた気がする。
朝起きたら枕元を粘着テープでコロコロやるのが日課になっていた。
今日はそれをする気も起らないのだ。
最近どうもついていないおかげで、隙さえあればボーっとしてしまう。
何を考えるでもなく、ただじっとしているのだ。
メールや電話も、以前はマメに返事をしていたが、今ではよほど重要な内容でない限り
自分だけで納得してお終いにしてしまうことが多くなっていた。
「俺も年取ったってことかなあ~」
ため息交じりに寝返りを打った。
(みゆきちゃん、どうしてるんだろうな…)
考えないようにしていたが、つい考えてしまう。
ケンカして、早くも2週間が経とうとしていた。
それなのにあちらからの連絡は一切ない。
こちらからは、返信が必要ない程度の軽いメールを数回送っている。
だが、どれにも返信は無かった。
これまでも1か月近く会えないことはあった。
お互い社会人なのだから、少々連絡が途絶えても仕方がないはずなのだ。
ブーン…
枕の下でスマホのバイブ音がした。
見ると、美幸ちゃんからのメールだった。
『しばらく連絡できなくてごめんなさい。
今日、もし暇だったら会えない?
できれば外で会いたいな。』
落ち込んでいた気分が一気に晴れるのがわかった。
「あったりまえじゃーーーん!」
俺はピョーンと飛び起きて早速返信した。
こんなに早くメールを返すのはいつぶりだろう?
夕方5時に待ち合わせが決まった。
気に入っている服をいくつか出し、さっそく鏡の前で合わせる。
すると薄毛の気になる額が目に入る。
(今日は髪の毛のセットも念入りにしなくては…!)
約束の時間まで瞬く間に時が過ぎていった。
待ち合わせ場所には美幸ちゃんが先に来ていた。



ディナーの時間には早いため、カフェを併設したバーに入る。
小さなテーブルにはちょうど二人分の背の高いイスがついている。
はたから見れば、お洒落で落ち着いたお似合いのカップルに見えるに違いない。
しかし、店につく過程も、今も、会話はほとんどない。
まず、視線がまったく合わないのだ。
嫌な予感がした。
ウェイターが注文を取りに来たので、俺はハイネケンを頼んだ。

ウェイター「かしこまりました。」

ウェイターが去った後、俺は美幸ちゃんの横顔を見つめた。
美幸ちゃんはテーブルに乗せた自分の手を見ている。
もはや他愛もない会話をする隙さえ無かった。






美幸ちゃんが意を決したように俺の目を見た。
俺はその目をそらす。







そのあとの美幸ちゃんの言葉はあまり思い出せない。
今度は俺が自分の指先を見つめ続ける番だったからだ。
俺の態度が冷たいとか、
連絡が少なくなったとか、
自分を見てくれていないとか、
よくある恋人への不満が聞こえたような気がする。
美幸ちゃんはひとしきり語り、ウーロン茶を一口飲んで、
テーブルに1000円を置いて去って行った。
去り際に、「 なんで何も言ってくれないの? 」 と言っていた。
( い っ た い 何 を 言 え ば い い ん だ よ )
手元のハイネケンがなくなりかけたころ、ウェイターが満面の笑みで問いかけてきた。
ウェイター「ご注文はいかがですか?」
しかし、ウェイターの目が俺に言う。
『お前、今あの女にふられただろう?』

自分の妄想を必死で抑え込んで店を後にした。
店の前でタクシーに乗り、脇目もふらず帰宅する。
タクシー代を払うと財布はほとんど空になった。
俺は月曜の朝までベッドに横たわることにした。
<続く>
2016年01月19日
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