トップページ > M字 of the DEAD ~育毛漫画~ M字を克服せよ!! > 16話 : 仕事のミス
16話 : 仕事のミス
先日美幸ちゃんとケンカしたと思ったら、タイミングが悪いことに少々仕事が暇になってしまった。
こんな時に時間ができても困る。
友達と遊びにいくような気持ちにはなれないし、だからといって美幸ちゃんに連絡しまくるのもどうかと思う。
今の二人には時間が必要なのだ。
これは 次に会った時惚れ直させるための自分磨きチャンス!! ととらえた俺は
ここぞとばかりに仕事のことだけを考えることにした。

そういえばそろそろ昇進昇級の査定があるのだ。
平社員の俺にはあんまり関係がない時期だけど、上司の百地さんや先輩たちが
この時期になるとピリピリし始める。
彼らには「評価する」という重大な仕事が任されているのだ。
俺はただ「評価される側」だから、今まではありのままを評価してくれとお気楽に構えていた。
それが今回はちょうどタイミングよく仕事に集中したい時期に重なっているのだ。
自分のモチベーションを活かすチャンスともいえる。
俺は新規顧客獲得に乗り出した。
新卒で入社した当時は新規にも積極的にアタックしていたのだが、
手間がかかるうえ、神経を非常にすり減らすため、今ではすっかりルート営業が多くを占めていた。
実際、すでにある顧客を満足に回すだけでも繁忙期には終電に乗っているのだから、
これ以上増やす必要が無いと言えばなかったのだ。
というわけで、せっかくのモチベーションを無駄にしないために今週の1週間を
『顧客獲得キャンペーン』 と勝手に銘打って
俺は飛び込みの「電話セールス」を行っているのだった。
月曜から始めて、今日で三日目の水曜日。
そろそろ新卒のころのコツも思い出し、饒舌なセールストークを取戻しつつあった。
そんな矢先だった。
先輩 「おいお前!」
突然、スゴイ剣幕の先輩に詰め寄られた。
先輩 「俺の得意先に俺の許可なく電話しただろ!!!」
俺 「え、えっと…どこの・・・?」
先輩 「とぼけるなよ。AA商事だ。今日あちらの担当者から連絡があって、契約を見直したいと言ってきたんだよ。」
俺 「あー、あの・・・(若くて可愛い声の女性が電話番だったとこだ・・・)」
先輩 「俺はな、AA商事には専用の契約プランで受注してるんだ。
お前がクソ丁寧に初期プランを話してくれたせいで
あっちの担当から 経費節約に一度契約を初期プランに戻したい って言われてんだよ!!!!」
俺 「・・・」
先輩 「俺はな!AA商事の売り上げが成績の要だったんだ!何年もかけて専用プランで売り上げられるよう努力してきたんだぞ!!!」
俺 「・・・」
先輩 「それをお前が…!!!!」
ここで先輩が俺に掴み掛ってきた。
完全に殴られる覚悟ができていた俺だったが、不幸なことに周りの先輩が止めに入った。
先輩が俺に「今季の昇進は無いと思えよ。俺が全力で阻止するからな。」と吐き捨ててそこを去るころには
同じフロアで働いているほぼ全員が俺の失敗を知っていた。
冷や汗、どころではない。
朝食も、昼食も、今ここでぶちまけて卒倒してしまいたい。
今すぐ全治3か月くらいの重傷になって入院したい。
殴られた方が何倍もマシだった。
自分の軽率な行動が先輩に大きな損害を与えたこと、
そして先輩の最後の言葉。
みんなの視線。
全てがひたすら俺を責めていた。

百地「おい、ちょっと来なさい」
俺 「はい...」
百地さんがその場から俺を救い出してくれた。
ミーティングルームで軽い注意を受けたものの、特に叱られることはなかった。
百地さんは俺がすでに大きなショックを受け、深く反省していることをわかってくれていたようだ。
今日は仕事が暇なこともあり、帰っていいことになった。
いくつか片づけたい仕事はあったが、帰ることにした。
ただ先輩の取引先に電話してしまっただけなら、俺の不注意というだけで話は済んだはずだった。
おそらく取引先のAA商事の経営状況や、担当者の心変わりなど、いろんな偶然が重なって起きた事故のようなものだ。
「ついてない・・・」
ぽつりと言葉にしていた。
気が付けば来たこともない公園の前だ。
会社から駅まで歩いているつもりだったが、めちゃくちゃな道を進んでいたようだ。
公園のベンチに腰掛ける。

先週は美幸ちゃんとケンカ。
そして今日の仕事での失敗。
オンもオフも散々だ。
こんな時に隆史の言葉を思い出す。
『気にしたらもっと禿げるしな。』
薄毛のことでなくても、こんなに悩んだら影響が凄そうだ。
明日にはすっかり禿ているかも。
もうそれでもいいような気がした。
公園の時計が「帰りの歌」を流しはじめる。
いつの間にか日が短くなっていたようで、すでに夕焼けがあたりを包んでいた。
<続く>
こんな時に時間ができても困る。
友達と遊びにいくような気持ちにはなれないし、だからといって美幸ちゃんに連絡しまくるのもどうかと思う。
今の二人には時間が必要なのだ。
これは 次に会った時惚れ直させるための自分磨きチャンス!! ととらえた俺は
ここぞとばかりに仕事のことだけを考えることにした。

そういえばそろそろ昇進昇級の査定があるのだ。
平社員の俺にはあんまり関係がない時期だけど、上司の百地さんや先輩たちが
この時期になるとピリピリし始める。
彼らには「評価する」という重大な仕事が任されているのだ。
俺はただ「評価される側」だから、今まではありのままを評価してくれとお気楽に構えていた。
それが今回はちょうどタイミングよく仕事に集中したい時期に重なっているのだ。
自分のモチベーションを活かすチャンスともいえる。
俺は新規顧客獲得に乗り出した。
新卒で入社した当時は新規にも積極的にアタックしていたのだが、
手間がかかるうえ、神経を非常にすり減らすため、今ではすっかりルート営業が多くを占めていた。
実際、すでにある顧客を満足に回すだけでも繁忙期には終電に乗っているのだから、
これ以上増やす必要が無いと言えばなかったのだ。
というわけで、せっかくのモチベーションを無駄にしないために今週の1週間を
『顧客獲得キャンペーン』 と勝手に銘打って
俺は飛び込みの「電話セールス」を行っているのだった。
月曜から始めて、今日で三日目の水曜日。
そろそろ新卒のころのコツも思い出し、饒舌なセールストークを取戻しつつあった。
そんな矢先だった。
先輩 「おいお前!」
突然、スゴイ剣幕の先輩に詰め寄られた。
先輩 「俺の得意先に俺の許可なく電話しただろ!!!」

先輩 「とぼけるなよ。AA商事だ。今日あちらの担当者から連絡があって、契約を見直したいと言ってきたんだよ。」

先輩 「俺はな、AA商事には専用の契約プランで受注してるんだ。
お前がクソ丁寧に初期プランを話してくれたせいで
あっちの担当から 経費節約に一度契約を初期プランに戻したい って言われてんだよ!!!!」

先輩 「俺はな!AA商事の売り上げが成績の要だったんだ!何年もかけて専用プランで売り上げられるよう努力してきたんだぞ!!!」

先輩 「それをお前が…!!!!」
ここで先輩が俺に掴み掛ってきた。
完全に殴られる覚悟ができていた俺だったが、不幸なことに周りの先輩が止めに入った。
先輩が俺に「今季の昇進は無いと思えよ。俺が全力で阻止するからな。」と吐き捨ててそこを去るころには
同じフロアで働いているほぼ全員が俺の失敗を知っていた。
冷や汗、どころではない。
朝食も、昼食も、今ここでぶちまけて卒倒してしまいたい。
今すぐ全治3か月くらいの重傷になって入院したい。
殴られた方が何倍もマシだった。
自分の軽率な行動が先輩に大きな損害を与えたこと、
そして先輩の最後の言葉。
みんなの視線。
全てがひたすら俺を責めていた。



百地さんがその場から俺を救い出してくれた。
ミーティングルームで軽い注意を受けたものの、特に叱られることはなかった。
百地さんは俺がすでに大きなショックを受け、深く反省していることをわかってくれていたようだ。
今日は仕事が暇なこともあり、帰っていいことになった。
いくつか片づけたい仕事はあったが、帰ることにした。
ただ先輩の取引先に電話してしまっただけなら、俺の不注意というだけで話は済んだはずだった。
おそらく取引先のAA商事の経営状況や、担当者の心変わりなど、いろんな偶然が重なって起きた事故のようなものだ。
「ついてない・・・」
ぽつりと言葉にしていた。
気が付けば来たこともない公園の前だ。
会社から駅まで歩いているつもりだったが、めちゃくちゃな道を進んでいたようだ。
公園のベンチに腰掛ける。

先週は美幸ちゃんとケンカ。
そして今日の仕事での失敗。
オンもオフも散々だ。
こんな時に隆史の言葉を思い出す。
『気にしたらもっと禿げるしな。』
薄毛のことでなくても、こんなに悩んだら影響が凄そうだ。
明日にはすっかり禿ているかも。
もうそれでもいいような気がした。
公園の時計が「帰りの歌」を流しはじめる。
いつの間にか日が短くなっていたようで、すでに夕焼けがあたりを包んでいた。
<続く>
2016年01月19日
コメントは下のボタンを押して別ウィンドウから投稿できます。