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15話 : 恋人とケンカ



今日は土曜日。
夕方から雰囲気のいいレストランでディナーをしたあと、うちにお泊りした美幸ちゃんがベッドで呼んでいる。

(俺だって早く寝たいんだってば・・・!)

だがお風呂上がりのヘアケアは欠かせない。
念入りにトリートメントし、洗い流し、頭皮マッサージ、そしてまたトリートメント。
マニュアルにこだわる俺は、商品説明に書いてある通りにやらないと気が済まないのだ。
美幸ちゃんが寂しがらないように、浴室の扉を開けている。


急いだ俺はうっかり洗い流すタイプのトリートメントを頭皮マッサージジェルと間違えてつけてしまっていた。
これでは一度全部洗い流して、最初からやり直さねばならない。





二人の間に不穏な空気が流れる。
(今のはちょっとまずかったな…)
心の中ではすでに反省しているのだが、ごめんとすぐに言うのは抵抗があった。
(このヘアケアは美幸ちゃんのためでもあるんだからわかってくれてもいいのに…)

遠くから冷静な・・・いや、冷たい美幸ちゃんの声が聞こえる。
(こ、これは明らかに機嫌を損ねている・・・どうしよう・・・)
すぐにでもご機嫌を取りに行きたいところなのだが、
もどかしいことに洗い流さなければ浴室を出られない。
できる限り急いで片づけ、美幸ちゃんの待つベッドへ急ぐ。

怒っていることには気が付かないふりで明るく話しかけてみた。

美幸ちゃんは目も合わせない。
確かに、最近俺は仕事や髪の毛のことばかりで、以前ほどマメな連絡ができずにいた。

心当たりがある分、演技もぎこちない。




どうやらこれ以上は火に油を注ぐだけになってしまうようだ。
俺は仕方なく背中を向けた美幸ちゃんの隣にひっそりともぐりこんだ。
(俺だってあんな面倒なケアなんてしたくないし、
今日は美幸ちゃんとゆっくりしたかったんだ・・・
それに、美幸ちゃんだってメイクとか着替えで俺を待たせることいくらでもあるくせに…)

俺は悪いと思いつつも、モヤモヤと出てくる不満を抑えきれずにいた。
(俺がかっこよくいることは美幸ちゃんにもプラスになるはずじゃないか。
ハゲたら人生詰むって言ったの美幸ちゃんだし。
本当に女は身勝手だよな…)
考えれば考えるほど、さっきの美幸ちゃんの態度が気に入らない。
(どうしてわからないんだ? 俺はこんなに悩んで、努力しているのに…!)
美幸ちゃんと接している背中の感触すら煩わしく感じるほど、
俺のモヤモヤはエスカレートしていった。
(続く)
2016年01月19日
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