14話 : 俺、元々こうなんだけど。

ドン と音が響いた。
近くを通る店員が少しだけこちらを向く。


ビール瓶をわざと強く机に置いたのだ。



「久しぶりだなぁ!」
「乾杯!」



俺と隆史は顔を見合わせて笑顔で乾杯した。


俺も隆史には久しぶりに会うので、いろいろ話したいことがあったし、
隆史も、しばらく誰とも会っていないと言っていたからか、嬉しそうな顔をしてくれている。


隆史は今日もニットをかぶっている。




俺「元気そうだな~前に合った時は死んでたもんな。」

隆史「いやー、あんときはほんときつかったよ。最近やっとひと段落してさ…飲みに行きたいなーと思ってたんだ。」



とりあえず近況報告と腹ごしらえだ。

今日はいつもの焼き鳥屋に来ている。ここは座敷があるからゆっくりできるのだ。


仕事の話や、出会いの話をしつつ、酒がすすむ。

俺はその間もずっと機会をうかがっていた。

俺(髪の毛の話、いつしよう…)



突然、そういえば俺の髪の毛さ… と切り出すのもおかしい。


下手をすれば隆史を傷つけかねないのだ。


そのとき、隆史がおもむろにタバコを取り出した。




俺「えっ・・・」

隆史「? なに?」

俺「たばこ・・・」

隆史「ああ、また始めたったったwww」


俺「いやいやいや、やめとけって、体に良くないし金もかかるんだぞ」

隆史「何言ってんだよ。お前は知らんだろうけど、大学卒業してからしばらく吸ってたんだ。」

俺「俺見たことなかったぞ?」

隆史「あー、だって禁煙してたからな。」

俺「ずっとしてろよ。」

隆史「もういいんだよ。もともと彼女に言われてやめてたんだ。別れたら俺の勝手だろ。」

俺「あー、うん。 そりゃお前の勝手だけどさ。」


隆史に彼女がいたことすら知らなかったが、前から煙草を吸っていたことも初耳だった。




今だ、 と思った。



俺「タバコなんて吸ってると禿るぜぇ?」


俺はわざと冗談めかして言った。

もし隆史が怒りだしても今なら 煙草をやめさせようとして言った という言い訳ができる。



隆史「うるせぇ!もう禿げてるんだよ!!」



隆史がぶっきらぼうに、でも笑って言い放つ。


俺は心からホッとした。

(隆史がハゲに対して神経質に反応するタイプじゃなくてよかった…)


俺「うわーやっちゃったね。タバコなんて吸うからだよ」

隆史「かもな。今吸うことはもうどうでもいいよ。吸い始めたことを後悔するけど。」

俺「じゃあさ、えと・・・どんくらいなの・・・?その、・・・」


俺がちらっとニット帽を見ると隆史は大きなため息をついた。


隆史「はあ、 お前な、気を使ってくれるなよ。悲しくなるだろ。俺がこんなに開き直ってるのに。」




そういって隆史はひょいとニット帽を脱いだ。



すると帽子に押さえられてくちゃくちゃになった髪の毛と、広いオデコがあらわになった。




俺「ふーん・・・」



正直、  確かに禿げているけど、それほどでもない  と思った。




隆史「結構いろいろやってたんだけどさあ、やっぱ体質には逆らえないわー」

隆史はそれほど気にもとめずに笑った。


隆史「お前も気を付けないとな。 あれ?そろそろやばいんじゃね?」



俺「っ!!!!」


隆史「ほんと薄毛始まったらあっという間だからな。」


俺「おおおお俺はもともとこんな感じだよ!!」



隆史「ほらほら、みてごらん、髪の毛除けるとこんなんなるよ。」




隆史はくしゃくしゃになった髪をかき上げてみせる。
最初に思ったよりもさらに奥までオデコが広がっていた。

特にこめかみのあたりは随分深くまでオデコになっている。
M字ハゲ というやつだ。


俺 「俺さ、禿げてはないと思うんだけど、もともとそんな形なんだよ!生え際がさ!」


隆史「あー、俺もそうだったよ、禿やすいんだよなあ~」



隆史が俺の方をチラッと見て、ふーっと煙を吐き出した。

隆史「ま、お前は禿げてもモテるだろうからあんま気にすんなよ。」


どうやら俺が動揺しているのに気づいたらしい。
隆史はそれとなくフォローしてくれた。


隆史 「気にしたらもっと禿げるしな。」



二ヒヒと笑う。



最後に余計なことを言うやつだ。



そのあとは他愛もない会話でしばらく飲み、
お腹を満たしたところでお開きとなった。



ハゲに関する直接的な会話はなかったものの、俺の悩みを隆史は汲んでくれたように思える。

何かの解決になったわけではなかったが、気分が凄く楽になった。



(続く)


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