1話 : ある日

朝日が昇ってもう随分経った。
窓からは太陽がサンサンとふりそそぎ俺の右半身を焼いている。

でも今起きあがるわけにはいかない。
何故なら、昨日の合コンで知り合ったみゆきちゃんが腕の中にいるからだ

俺はもう1時間近く、その綺麗な寝顔を見ている。


昨日の合コンもいつもどおり、俺の一人勝ちだった。


3対3だったわけだが、集合場所に俺が来たとたん、
「げええお前かあ」と隆史はあからさまに嫌そうな顔をしたし、
忠義は俺と好みが被らないことを祈っていた。



自分で言うのもなんだが、俺は自他ともに認めるイケメンだ。


小学生の頃までは女に間違われることもしばしばあり、見た目はコンプレックスだったのだが、
中学に入ってからはいつの間にか「ジャニーズ顔」だともてはやされ、
高校生になって身長が20cm伸びて以降は1ヶ月以上恋人が途切れたことはない。


175cmの身長と、痩せ型の体型、サラサラの髪、そしてこの顔が俺を勝手にモテさせてくれているのだ。


そして今これからのことを考える。

みゆきちゃんが目を覚ますと、俺は交際を申し込む。
みゆきちゃんは大げさなリアクションで俺に抱きついてくる。

今日が土曜日で良かった…



楽しい想像をしていたからか、少し汗をかいてしまったようだ。
部屋の気温も上がっているし、
そういえば昨日は風呂にも入らずに寝てしまったんだった。

みゆきちゃんを起こさないようにベッドを出る。



不意に頭に痒みを感じて手を当てた。



「 べとっ 」



うげ… 汗でひどいことになっているようだ。

そういえば昨日は気合を入れてヘアセットにも励んだのだ。








今、俺の頭は汗と、油と、整髪料で大変なことになっている。

最近、飲み会の翌日はこうなることが多い。


まあ、シャワーを浴びて寝ればいいだけの話なんだろうけど。





俺はシャワーを浴びながら友人たちを想った。



そういえば隆史のやつ、昨日はだせえカッコだったな。

もう春だってのにニットキャップなんか被ってんだもん。
そりゃ女の子にモテないわ。


学生の頃は隆史がファッションリーダーだった。
俺も服装については随分参考にしたもんだ。








あのオシャレに人一倍うるさかった隆史がなんで・・・? 


そんな疑問、持つはずもない。


その時の俺は、このあとみゆきちゃんをどう起こしてあげようかという妄想で頭がいっぱいだった。


体を伝って流れていく黒い塊にも気づくことはなかった。



<続く>

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